前年度から引き続き、マウス歯髄幹細胞(DPSC)の予期的な分手法の確立と生体内におけるDPSCの局在について研究を行った。高い増殖能と骨、軟骨、脂肪への分化能を有するSca-1、PDGFRα共陽性細胞が常生歯形成端に存在することをこれまでに明らかにしたが、本年度はSca-1、PDGFRα共陽性細胞の生体内での増殖能について明らかにした。BrdUのin vivo投与とBrdUの免疫学的解析法により生体組織中の増殖細胞を識別できることから、BrdUをin vivo投与したマウス由来切歯歯髄のFCM解析とBrdUに対する免疫蛍光染色法により、Sca-1、PDGFRα共陽性細胞が高い増殖能を有すること、常生歯形成端に高い増殖能を持つ細胞集団が存在することを明らかにした。以上より、Sca-1、PDGFRα共陽性のDPSCがマウス切歯における幹細胞ニッチと考えられている常生歯形成端に存在し、高い増殖能と分化能を有することが示唆された。さらに、DPSCと骨髄間葉系幹細胞(MSC)における細胞表面マーカーの発現についてFCM解析を行ったところ、DPSCでは大半のMSCマーカーの発現が認められた。 また、マウス由来ストローマ細胞がヒト造血幹細胞(HSC)との共培養によってin vitroでの支持能を有することから、マウス切歯由来DPSCによるヒトHSCの支持能について解析したところ、DPSCをFeeder細胞としたヒトHSCとの共培養では、CD34陽性HSCの支持能はFeeder細胞の無い培養条件と比較して有意に高かった。一方、DPSCをFeederとしたHSCの支持能は、MSCをFeederとした場合と比較すると有意に低くなるという結果を得た。
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