本研究では、「薬物担持ナノ炭素材料」による早期骨形成能の実現、及び「モチーフ・プログラムド人工タンパク質」を用いた堅牢な細菌感染防御能の実現を通して、即時荷重インプラントに最適なチタン表面改質法を開発することを目的とする。「薬物担持ナノ炭素材料」を用いた実験では、前年度においてCNHをキャリアとすることで、チタン表面における固相化薬物送達システムの開発に成功した。そこで本年度では、チタン表面に固相化したCNHの多層化技術に取り組んだ。具体的には、PEG-NHBP1(CNH結合ペプチド)を用いることでシリカのミネラリゼーション能を利用し、CNH層の上にシリカ層を積層することができた。この積層技術により薬物の徐放時間の延長が可能となった。「モチーフ・プログラムド人工タンパク質」を用いた実験では、前年度においてチタン結合モチーフと細胞接着モチーフを持つ人工タンパク質を作製し、in vitro実験においてそのチタン結合能と細胞接着能を確認した。本年度では、in vivo実験としてラット大腿骨へのチタン製インプラントの埋入実験を行った。具体的には直径2mm、長さ3.3mmのチタン製インプラントを作製し、SLA処理を施した上で、作製した人工タンパク質を吸着させた。このインプラントをラット大腿骨に埋入し、まずは1、3、7日例における初期反応を確認した。結果は人工タンパク質吸着インプラントにおいて、コントロール群(タンパク無し)と比較し、いずれの日例においても炎症反応等は見られなかったため、人工タンパク質による生体為害性は無いものと考えた。今後は観察期間をのばし、人工タンパク質の機能・影響等を検討していく予定である。
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