口腔カンジダ症の発症には一般に宿主の免疫能が関与していると考えられており、健常人においても栄養状態の低下と、口腔カンジダ症の発症が関連することや、加齢とともに、カンジダ菌陽性率が増加してくることも明らかになってきた。口腔カンジダ症は、粘膜表面からの感染に対して第一ステップとして自然免疫が主体に対応すると考えられており、Toll様受容体(TLR)に着目した。ヒトの自然免疫能を評価し、口腔カンジダ症の新たな発症因子を探ることが本研究の目的である。 当該年度では、口腔カンジダ症患者と同年代の非口腔カンジダ症患者の末梢血単核球のTLR2、TLR4の発現レベルをFACSで、炎症性サイトカイン産生能についてELISA法で比較検討した。TLR2の発現レベルについては、口腔カンジダ症患者群とコントロール群に有意な差は認められなかったが、口腔カンジダ症単発患者と再発を繰り返す難治性患者を比較した場合、難治性患者に、TLR2発現レベルの有意な低下が認められた。TLR4は、口腔カンジダ症患者とコントロール群で発現レベルはいずれも低かった。口腔カンジダ症群とコントロール群でのTLRの発現レベルに差は認められなかったことから、TLRの機能に差があると推測し、サイトカイン産生能について比較検討を行ったところ、口腔カンジダ症患者とコントロール群に有意な差は認められなかった。1.口腔カンジダ症はコントロール群と比較し、TLR2の発現レベル、およびTLRの機能において有意な差は認められなかった。2.難治性のカンジダ症では、単発性のカンジダ症と比してTLR2の有意な発現低下が認められた。すなわちTLR2は口腔カンジダ症の発症因子とはならないが、治療に対する抵抗性に関与している可能性が示唆された。
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