本年度申請者らはRIG-I(retinoic acid-inducible gene-I)の口腔癌における役割を検討すべく研究を行った。本研究においては、これまで遂行してきたRIG-I遺伝子の機能解析に加えて、口腔癌由来細胞株を用いて同遺伝子のシグナル伝達カスケードを明らかにし、口腔癌細胞の細胞周期を制御し、加えてアポトーシスに導くことを目的とした。細菌やウイルスに常に暴露されている環境を想定し、二本鎖RNAであるpolyICを用いて、口腔癌細胞におけるRIG-Iの発現を検討したところ、polyIC添加群ではRIG-I、GADD45Aの発現増強とCDK2の発現抑制を認めた。この結果はタンパク産生でも同様であった。さらにRIG-I強制発現した際にはCDK2の発現抑制も認められた。口腔癌細胞におけるRIG-I刺激によるタンパクの産生をプロテインアレイを用いて包括的に検討したところ、同様の結果を得た。フローサイトメーターを用いた細胞周期の変動解析では、RIG-IをノックダウンすることによってS期が増加し、G2/M期が減少していた。以上の結果から、RIG-Iは口腔癌細胞株の細胞周期に関与していることが示唆された。今後、マイクロアレイによる解析結果とプロテインアレイによる解析結果を包括的に統計処理し同遺伝子のシグナル伝達カスケードを解明する予定である。
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