光線力学的治療法(PDT)は肺癌、皮膚癌、子宮頸部癌、口腔扁平上皮癌など広範囲に適応を持つ治療法である。外科的浸襲の少ない、患者のQOLに配慮した治療で注目を浴びる。しかし、その治療効果をみると、術後、短期間の治療成績は良好であるが、長期間の追跡調査では再発率が高いという報告があり、問題となっている。 今回の研究目的は、舌癌細胞株、歯肉癌細胞株にNpe6を使用したPDTを施行し、血管新生因子、サイトカインの発現を網羅的に検索、遺伝子レベル、タンパク質レベルで証明し、その発現経路において抑制を行うことにより、血管新生抑制、再発率軽減の可能性を明らかにすることである。昨年度は、各癌細胞に対しVEGF発現を指標としたNPe6濃度、レーザー出力の至適条件を求めた。また、遺伝子・タンパク質レベルでの発現を確認した。同一条件でcDNAアレイを行い、血管新生増殖因子の発現を網羅的に検索した。結果、IL-8、EREG、VEGF等の優位な上昇及び関連するサイトカインを確認した。今年度は、研究実施計画どうりに、血管新生増殖因子の発現機序の一部を解明し、各種抑制剤・抗体による血管新生増殖因子の発現抑制の効果(dose/time dependent共に)を図ることが可能であった。また、細胞増殖アッセイ、細胞浸潤アッセイにより血管新生増殖因子の抑制剤を添加した場合の各口腔癌細胞の抗腫瘍効果、再増殖抑制率(再発率)についても有意差のあるデータの収集が可能であった。 今年度の研究で明らかになった、癌細胞の再増殖へのプロセス、血管新生増殖抑制剤添加による再増殖抑制率等によりNpe6-PDTの治療効果を減弱させない治療法開発へ、次年度以降の動物実験モデルへステップアップできるよう基礎的データの蓄積を行うものである。
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