顎口腔領域に腫瘍性病変を有する症例に対し、治療前後にF-18標識αメチルタイロシン(FMT)およびF-18標識フルオロデオキシグルコース(FDG)を用いたPET-CT検査(General Electric社およびSIEMENS社製)を実施し、画像データと病期分類、病理組織診断結果などとの対比を行った。検査結果からは、FMTの集積は増殖能の高い腫瘍への集積特異性が高いことが確認され、正常組織や良性疾患への非特異的集積が少なく、コントラストが良好であり、他のモダリティで困難となるような良悪性の鑑別などに有用と考えられた。ROC解析にて原発巣の感度、特異度、正確度は、FDGとFMTは近似した。リンパ節転移関しては、絶対的な集積が低く、感度がFMTはFDGに劣る結果となった。FDGと比較し、組織重量あたりの集積が低いことや、合成時の収率が低いことなども示唆された。 対象症例において、手術・生検時に得られた検体を用い、HE染色、免疫組織化学染色を行った。抗LAT1モノクローナル抗体を用いた免疫染色では、LAT1の発現状態を観察した。FMT集積陽性となった症例の標本では、免疫染色にてLAT1発現が優位に見られたのに対して、FMT集積陰性の腫瘍では、LAT1の発現は不明瞭であり、これらの結果を各学会などにて報告を行った。その他にKi-67、TopoisomeraseIIα、p53、p63などのマーカーを用い、FDGの集積と発現率との関連を検討、雑誌への投稿を行った。これらのマーカーは、近年予後の推測や選択的治療の適否を判断する際に、有用な情報をもたらすことが着目されており、FDG集積との正の相関が見られた結果を報告した。また、平成21年度以降の治療施設運用開始にあわせ、継続したデータの収集・解析を行う。
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