補助刺激分子の一つであるB7-H3は、T細胞やNK細胞、抗原提示細胞などの免疫担当細胞のみならず、骨芽細胞、線維芽細胞や上皮細胞などの非免疫細胞にも発現が認められる。ヒトでは、肝、肺、膀胱、精巣等、さまざまな臓器での発現が認められるほか、膵臓癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、卵巣癌などの多くの癌細胞上での発現が報告されている。 一方、B7-H3は、CTLの誘導やIFN-γの産生を促すといった免疫応答を増強させる報告がある一方で、Th1細胞による免疫反応を抑制するという報告もあり、一貫していない。その理由として、現在報告されているTLT-2以外に複数のレセプターが存在する可能性や、B7-H3の発現レベルが異なる可能性、T細胞以外の細胞によって間接的に免疫応答を制御している可能性などが考えられているが、未だ推測の域を出ない。実際、ヒトの癌細胞上のB7-H3発現と予後との解析においても、抗腫瘍免疫応答を増強していることを示唆する報告と抑制していることを示唆する両方の報告が複数なされている。 B7-H3が口腔癌の予後因子となりうるか、また、抗腫瘍免疫療法に応用できるかを検討するためにも、当科における口腔癌患者の標本を用いて、その発現と予後について検討している。
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