研究概要 |
昨年度の結果から、口腔粘膜の上皮内癌において、その前段階の病変である異型上皮よりも、上皮層内に取り込まれる孤立した以上微血管(上皮内血管)が有意差をもって多いことが判明した。この病理組織学的所見を、NBI (VISERA OLYMPUS ENF TYPE VQ, OTV-S7, CLV-S40)を用いた、生体血管観察との所見との対比をおこなった。正常口腔粘膜7名についてまず検査をおこなった。部位は、舌(舌側縁、舌背、舌下面)口底、頬粘膜、軟口蓋、硬口蓋、付着歯肉とした。NBIにより、粘膜に横走する微小血管が緑色に明瞭に描出され、さらには近接撮影または拡大撮影では、粘膜に垂直に走行し、上皮釘脚間でループを形成する微小血管の緑色ドット状の描出が確認された。また、正常粘膜での、角化の強い部位(視覚的には、通常よりも白色を呈する。病理学的には粘膜上皮の肥厚と錯角化の亢進)と考えられる、咬合線上の頬粘膜、付着歯肉および舌背では観察困難であった。口腔扁平上皮癌患者(舌:3名、頬粘膜:1名)についてNBIによる撮影を施行した。いずれも、正常粘膜では確認されなかった、褐色斑(Brownish area)が確認され、規則的な緑色ドットは確認できなかった。これは、病変内で白色の強い部位では確認困難であったことから、やはり、癌部においても上皮が厚く血管が表層に位置していない状態ではNBIの効果は薄いと考えられた。また、浸潤癌周囲に広がる悪性境界病変では、緑色ドットや、褐色に描出される血管の拡大や不規則な走行といった所見が認められた。これは、免疫組織化学で確認される上皮内血管と、浸潤癌周囲の新生血管と考えられた。
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