片頭痛は人口の約10%が罹患している疾患であり、発作の際には日常生活の継続が困難なほどの拍動性頭痛が起こり、悪心・嘔吐などを伴う。また発作中には歯痛や顔面痛を伴うことがあるため、患者が歯科を受診する場合も多い。本研究の目的は、片頭痛の発生機序に関与しているといわれているCortical Spreading Depression (CSD、大脳皮質拡延性抑制)ラットモデルを用いて、現在の臨床麻酔領域で使用されている麻酔薬等がCSD発生にどのような影響を及ぼすかについて検討することである。そして、それぞれの薬物が持つ作用機序とCSDの関連を明らかにすることで、片頭痛発症メカニズムの解明、さらには新規の片頭痛予防薬、治療薬の開発につながるものと考えられる。また、CSDは片頭痛だけでなく、脳梗塞などの脳血管障害発症時に発生し、その病態進行に悪影響を与えることが分かってきていることから、本研究の結果によって、脳血管障害急性期の病態進行と麻酔薬の関連についても明らかにしていくことが期待される。 今年度は、昨年度に引き続き、現在の臨床領域でよく使用されているプロポフォール、デクスメデトミジン、イソフルレンの3種類の麻酔薬のCSD発生に対する効果を検討し、この成果を2011年5月にBrain'11(国際脳循環代謝学会)、10月に第39回日本歯科麻酔学会総会・学術集会で発表した。さらに、これまでに得られた結果(CSD発生を抑制するといわれているイソフルレンよりやや弱いものの、デクスメデトミジンがプロポフォールと比較して有意にCSD発生を抑制する)に、CSD発生を抑制しないといわれているペントバルビタールとの比較検討を加えて、論文にまとめる予定である。
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