研究概要 |
口腔扁平上皮癌におけるTPX2の発現解析を行った結果,口腔扁平上皮癌でのTPX2 mRNAの発現は正常歯肉に比較して亢進していた.また口腔扁平上皮癌においては,TPX2 mRNAの発現レベルとRHAMM mRNAの発現レベルは相関していることが判明した(International Journal of Oncology, 2009).このことは、RHAMMが細胞周期の進行に重要な役割を担う可能性を示唆するものである.今回,唾液腺腫瘍におけるTPX2の発現を明らかにする目的で,当科にて手術時に摘出した唾液腺腫瘍におけるTPX2の発現と臨床病理学的指標や転移および予後との関わりについて検討した.その結果,TPX2の過剰発現と,その遺伝子発現と腫瘍の増殖活性との間に相関関係を認めた.このことは,TPX2遺伝子が唾液腺悪性腫瘍の増殖において重要な役割を担っていることを示唆するものである.また、TPX2の高い発現は,悪性腫瘍における細胞分裂の増加や細胞周期制御の異常を示すだけでなく,TPX2の過剰な発現が,悪性転化にも関わっている可能性を示唆している.今回,唾液腺腫瘍においてTPX2遺伝子の過剰発現が明らかとなったことは臨床病理学的にも大変意義のあるものであると考えられる.さらに唾液腺腫瘍由来細胞を用いた研究より,RHAMMは細胞周期M期において発現増加を認め,RHAMMは紡錘体とほぼ同様の局在を示し、細胞周期M期の進行を制御することが明らかとなった.さらに,骨形成性線維腫由来細胞を用いた研究より,RHAMMはERK1/2 kinaseのリン酸化に関与し,TPX2とともに複合体を形成することにより,細胞周期M期の進行を制御することが明らかとなった(Hatano, Shigeishi et al. Lab Invest, 20010).さらに,RHAMMノックダウンにより,AuroraAのリン酸化が抑制されたことから,RHAMMはAuroraAを介して細胞周期M期の進行を制御することが示唆された.このことは,RHAMMがヒアルロン酸の受容体として機能するのみでなく,腫瘍の増殖に重要な役割を担うことを示唆すものである.
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