本研究では、骨伝導性が向上し、さらに比較的早期にセメントが吸収し骨置換され、それと同時に抗菌薬が持続的に徐放するようなアパタイトセメントを調整・設計し、より高機能性の非崩壊型アパタイトセメントを開発することを目的とする。初年度は、抗菌薬含有アパタイトセメントの作製・基本物性および細胞を用いたin vitro評価を行い、抗菌薬含有アパタイトセメントにおける分化能および石灰化能が確認され優れた骨形成誘導能が分かった。そのため本年度は、実際に、家兎顎骨骨髄炎モデルを作製し、試作抗菌薬含有アパタイトセメントの抗菌効果および骨伝導能・骨形成能など組織学的検討を行った。 まず、家兎顎骨骨髄炎モデル作製のため、18G注射針を挿入し臨床分離MRSA培養液を1ml(3×10^6CFU)注入後、創部を縫合して閉鎖した。経日的にX線検査および血液一般検査にて顎骨骨髄炎の所見が認められた。 続いて、抗菌薬含有アパタイトセメントの抗菌効果および組織親和性と骨伝導性の検討を行った。顎骨骨髄炎を発症した顎骨を掻爬し、死腔のまま閉創したcontorol群、抗菌薬の含まないアパタイトセメント、各種抗菌薬含有アパタイトセメントをそれぞれ埋入後、脱灰および非脱灰組織切片を作製し、病巣部位を組織学的に観察した。その結果、contorol群、抗菌薬の含まないアパタイトセメントでは、骨髄炎の所見が残ったままで治癒しなかったが、抗菌薬含有アパタイトセメントの場合、徐々に炎症が軽減し、さらに骨形成も進行する所見が得られた。最終的には骨髄炎が完全に治癒し抗菌薬含有アパタイトセメントの顎骨骨髄炎において有用な材料であることが明らかになった。
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