高知大学医学部附属病院歯科口腔外科を受診した口腔扁平上皮癌1次症例を対象に、インドシアニングリーン(ICG)ならびに赤外観察カメラシステムを用いてセンチネルリンパ節(SLN)を同定することが可能か否かを検討した。 段階希釈したICGを原発巣周囲に局所注射した後、赤外観察カメラシステムを用いて皮膚上よりオトガイ下~顎下部~頸部を観察した。しかしながら、皮下脂肪が非常に少なく、また、広頸筋が非常に薄い症例を除きSLNの同定は困難であった。そこで、顎下部に約5cmの広頸筋に達する横切開を加えて広頸筋下層を明示したところ、SLNを同定することが可能となった。その際のICGの至適濃度および投与量はそれぞれ0.25mg/mLおよび1mLで、さらに、ICGを局所注射してから赤外観察カメラシステムで観察するまでの至適時間は3分であった。一方、浅側頭動脈より腫瘍栄養動脈に超選択的に留置したカテーテルを介してTCGを投与した場合、ICGは血管系に流入するのみで、いずれのICG濃度を用いても、また、顎下部に皮膚切開を加えてもSLNの同定は困難であった。これらの検討とともに、従来の<99m>^Tc-スズコロイドとガンマプローブを用いたラジオアイソトープ法とICGと赤外観察カメラシステムを用いた色素法を併用してSLNを同定した。 同定されたSLNの個数は1~5個に亘り、平均2.5±1.7個で、通常の迅速病理組織検査による転移の有無の判定に関してICGは全く影響を及ぼさなかった。 以上より、ICGと赤外観察カメラシステムを用いた色素法により口腔扁平上皮癌におけるSLNの同定は可能で、その成績もラジオアイソトープ法と同程度であり、十分に臨床に用いることが可能であると思われた。
|