申請者らはこれまで発見されたさまざまな扁平上皮癌由来の癌抗原ペプチドを用いて、口腔扁平上皮癌患者の末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cells ; PBMC)より細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocytes ; CTL)の誘導を試みた。ただし有用と思われる癌抗原ペプチドでもCTLの誘導が20数%であった。その理由として患者ごとにhuman leukocyte antigen (HLA)-class I上の癌抗原ペプチドが異なるためであった。よって既存の抗原ペプチドを用いた癌細胞主導型のワクチン療法には限界があり、患者ごとに癌抗原(ペプチド)を同定するT細胞主導型ワクチン療法[テーラーメイド医療]の開発が望まれている。 癌抗原の単離同定法は、癌細胞株を樹立して遺伝子解析する方法が一般的であるが、切除物(癌組織、正常組織、腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocytes ; TIL)、線維芽細胞)のみで癌抗原の同定を可能とした方法を開発することが本研究目的である。それにより、飛躍的に癌抗原の同定が可能となりテーラーメイド型癌ワクチン療法の開発につながるものと思われる。 申請者が樹立した口腔扁平上皮癌細胞株に自家のPBMCを混合培養してCTLを誘導した。CTLが誘導できなかったPBMCの集団をネガティブコントロールとし、自家癌誘導CTLとTILをpolymerase chain reaction (PCR)法やsingle-strand conformation polymorphism (SSCP)法を用いてT細胞レセプター(TCR)を解析した。自家癌誘導CTLとTILに共通してVβ7遺伝子ファミリーの中に発現パターンが同様なクロノタイプの集積を認めた。これらはエフェクター細胞で、癌抗原同定には重要な細胞である。 今後もさらに症例を増やしてエフェクター細胞の同定を行い、新たな癌抗原の同定方法の開発を行う予定である。
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