研究概要 |
申請者らはこれまで発見されたさまざまな扁平上皮癌由来の癌抗原ペプチドを用いて、口腔扁平上皮癌患者の末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cells ; PBMC)より細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocytes ; CTL)の誘導を試みた。SART-1、2,3、CyB、lck、ART4など13種類の腫瘍関連抗原ペプチドでPBMCよりCTLの誘導を試みたが、2.9%~22.0%であった。20%を超えたものは、SART-1_<690-698>、SART-2_<93-101>,ART4_<75-84>の3種類のペプチドのみであった(参考文献1)。誘導率が低かった理由として患者ごとにCTLが最も反応す惑癌抗原ペプチドが異なるためであった。よって既存の抗原ペプチドを用いた癌細胞主導型のワクチン療法には限界があり、患者ごとに癌抗原(ペプチド)を同定するT細胞主導型ワクチン療法[テーラーメイド医療]の開発が望まれている。 癌抗原の単離同定法は、癌細胞株を樹立して遺伝子解析する方法が一般的であるが、原発巣からの癌細胞株の樹立は困難で31症例中に2症例しか成功できなかった。樹立できた1症例に対してはPBMCからCTLの誘導は可能であったが、時間がかかりすぎで患者の治療には応用できない。そのため切除物(癌組織、正常組織、腫瘍浸潤リンパ球、転移リンパ節の癌活性化リンパ球、線維芽細胞)のみで癌抗原の同定を可能とした方法の開発を進めている。また、原発巣から樹立した癌細胞株と同一患者で後発転移リンパ節より樹立した癌細胞株を用いて、転移能の分子生物学的違いやCTL誘導能についても研究を進めている。 参考文献1. Cancer Lett.2012 Feb 22. In vitro induction of specific CD8(+) T lymphocytes by tumor-associated antigenic peptides in patients with oral squamous cell carcinoma. Toyoshima T, Kumamaru W, Hayashida JN, Moriyama M, Kitamura R, Tanaka H,Yamada A, Itoh K, Nakamura S.
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