申請者らはこれまで発見されたさまざまな扁平上皮癌由来の癌抗原ペプチドを用いて、口腔扁平上皮癌患者の末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cells;PBMC)より細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocytes;CTL)の誘導を試みた。13種類の腫瘍関連抗原ペプチドでPBMCよりCTLの誘導を試みたが、2.9%~22.0%であった。よって既存の抗原ペプチドを用いた癌細胞主導型のワクチン療法には限界があり、患者ごとに癌抗原(ペプチド)を同定するT細胞主導型ワクチン療法[テーラーメイド医療]の開発が望まれている。 現在、切除物(癌組織、正常組織、腫瘍浸潤リンパ球、転移リンパ節の癌活性化リンパ球、線維芽細胞)のみで癌抗原の同定を可能とした方法の開発を進めている。同時に、原発巣から樹立した癌細胞株と同一患者で後発転移リンパ節より樹立した癌細胞株を用いて、転移に関連した分子生物学的特性について解析中である。転移リンパ節由来細胞株では、原発巣由来細胞株よりも増殖能、コロニー形成能、遊走能、血管内皮細胞への接着能が高かった。また、転移リンパ節由来細胞株では、E-cadherin、Desmoplakin、ZO-1など上皮系関連遺伝子は発現が低く、Vimentin、N-cadherin、Fibronectinなどの間葉系関連遺伝子では同程度の発現であった。 今後は、ヌードマウスにおいて高転移株と低転移株を樹立し、同一患者のCTLとの反応で、細胞障害性を確認しながら、もっとも反応の高い癌抗原の同定を進めてゆく予定である。
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