研究課題
若手研究(B)
口蓋裂との関連が報告されているSprouty2について、口蓋癒合における役割を明らかにするため、マウスを用いた研究を行った。Sprouty2遺伝子欠損 (knock out:KO)マウスでは、胎仔の21.9%に口蓋裂を認めた。また、口蓋裂発症胎仔では口蓋突起は挙上しておらず、舌の側方に存在していた。野生型 (wild type:WT)マウスの口蓋癒合時期(口蓋突起挙上前、接合時、癒合時)では、Sprouty2は口蓋上皮細胞と口蓋間葉細胞に発現していた。時期によるmRNA発現量の変化はなく、口蓋癒合時期を通して恒常的に発現していた。Sprouty2非存在下での口蓋癒合能について検討したところ、Sprouty2 siRNA導入群と対照群はいずれも接合部口蓋上皮が消失し、完全に癒合した。そこで、Sprouty2 KOマウスの口蓋におけるアポトーシスについてTUNEL染色を用いて検討したところ、WTとの間に有意な差は認めなかった。次に、Ki-67免疫組織化学染色にて細胞増殖について検討したところ、Sprouty2 KOマウスの口蓋間葉にはKi-67陽性細胞が有意に多かった。また、Sprouty2 siRNAを導入したWTマウスの口蓋間葉細胞を用いてWST-8アッセイにて生細胞数を測定したところ、Sprouty2 siRNA導入群で有意に細胞増殖が亢進していた。また、5-bromo-2'-deoxy-uridine (BrdU)取込試験にてSprouty2 siRNA導入群で有意にBrdU陽性細胞が多かった。口蓋間葉細胞のタンパクをウエスタンブロット法にて解析したところ、Sprouty2 siRNA導入群ではFGF刺激時に細胞増殖の指標となるextracellular regulated kinase (ERK)のリン酸化が亢進していた。また、fibroblast growth factor (FGF)シグナルにより誘導されるhomeobox,msh-like1(Msx1)、paired-like homeodomain transcription factor1 (Ptx1)、ets variant gene5(Etv5)のmRNA発現がSprouty2 KOマウスの口蓋で亢進していた。以上の結果より、Sprouty2はFGFシグナルを介して口蓋間葉の細胞増殖を制御しており、Sprouty2 KOマウスでは口蓋間葉細胞の増殖異常により口蓋突起の挙上が阻害され、口蓋裂を発症することが示唆された。
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Biochemical and Biophysical Research Communications 404
ページ: 1076-1082
日本口蓋裂学会雑誌 35(3)
ページ: 186-194