口腔扁平上皮癌において細胞と細胞外基質との関連をシグナルデンタルアダプター因子であるCRK IIに着目し検討した。生検標本を用いてCRK IIの発現を免疫組織化学的染色を用いて検討したところ、腫瘍の浸潤先端部位、びまん性に浸潤する部位に高発現がみられた。CRK IIの発現と臨床病理学的因子との関連を検討したところ、CRK IIの過剰発現とT分類、N分類、浸潤型との間に有意な相関性が認められた。また、CRK IIの過剰発現と5年生存率との間にも有意な相関がみられCRK IIの発現が有意な予後因子となる可能性が示唆された。培養口腔扁平上皮癌細胞株であるOSC20を用いてCRK IIの発現をsiRNAを用いて行ったところ、wound healing assayにて遊走能が、またmatrigel invasion assayにて浸潤能の有意な低下が認められた。加えて、CRK IIの上流因子であるp130Cas、下流因子であるDOCK180、Rac1、アクチン関連足場タンパクであるcortactinの発現を検討したところ、CRK IIの発現抑制によりそれらの分子の有意な発現抑制がみられた。CRK IIの発現抑制によりp130Cas-CRK II-DOCK180複合体形成が抑制されシグナル伝達が阻害される可能性が示唆され、cortactinの発現抑制もみられ、CRK IIが口腔扁平上皮癌の転移・浸潤に強く関与していることが示唆され、また、CRK IIが口腔扁平上皮癌治療における分子標的治療の有用なターゲット分子となる可能性が示唆された。
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