研究課題
【背景と目的】5-フルオロウラシル(5-FU)は、様々な固形癌の治療に用いられる抗癌剤であり、口腔扁平上皮癌(OSCC)の治療においても重要な役割を担っている。5-FUをベースとした集学的治療は、多くのOSCC症例に高い治療効果を示す一方、いくらかの症例は治療に対する抵抗性を示す。一方、5-FUの抗腫瘍効果は、主としてDNA合成阻害によってもたらされると考えられ、TSとDPDは、5-FU代謝の観点より耐性のメカニズムに関わることが示唆されている。しかしながら、詳細な5-FUの耐性のメカニズムについては十分な解明がなされていないため、OSCCの5-FU耐性のメカニズムを明らかにするために本研究を行った。【材料と方法】舌癌由来の口腔扁平上皮癌細胞株SASを用いて実験を行った。我々は、DMEM中で培養中のSASに、5-FUを加えて0.1μg/mlより段階的に濃度を漸増させ、持続的に作用させた。その結果、5-FUの最終濃度が2.0μg/mlでも安定して増殖する5-FU耐性株SAS/R2.0を樹立し、その後の解析に用いた。樹立した耐性株の5-FU耐性度の評価は、IC50による親株との比較によって行った。【結果】SAS/R2.0は親株と比べて耐性度が5.6倍を示した。RT-PCRによる遺伝子レベルの解析結果では、TS,DPD,MDR-1,cIAP2の遺伝子発現が親株よりも上昇していた。一方、ウエスタンブロット法によるタンパクレベルの解析では、TSとcIAP2のタンパク発現が親株よりも上昇していた。5-FU刺激によって誘導されるアポトーシスの発現程度についてTUNEL法にて解析を行った結果、耐性株(1.2%)は、親株(8.7%)と比べてアポトーシスの抑制が起こっていた。【結論】OSCCにおける5-FU機構は、5-FUの代謝調整に加えて、アポトーシス抵抗性が関与していることが示唆された。
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Int J Radiat Oncol Biol Phys. 76
ページ: 1347-1352
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