研究概要 |
口腔癌におけるSFRP遺伝子のメチル化状態と発現状態との関連を解析する目的でRT-PCR法によるSFRP1, SFRP2, SFRP5各遺伝子の発現解析およびMethylation-specific PCR (MSP)法によるメチル化解析を行った。17種の口腔癌細胞株について解析を行った結果、すべての細胞株においていずれかのSFRP遺伝子の発現抑制が見られた。メチル化阻害薬5-Aza-dCで処理を行った細胞株で同様の解析を行ったところ、いずれも発現の抑制は見られなかった。MSP法の結果と対比させたところ、遺伝子のメチル化と発現抑制との間に関連が見られた。臨床例44症例においてSFRP遺伝子のメチル化解析を行ったところ、半数の22症例においていずれかのSFRP遺伝子のメチル化が認められた。Wntシグナル経路活性を解析する目的で口腔癌細胞株での12種のWnt遺伝子の発現解析(RT-PCR)およびウェスタンブロット法でのβ-cateninタンパクの発現解析を施行した。すべての細胞株において複数のWnt遺伝子の発現を認めた。β-cateninタンパクはすべての細胞株で発現が認められた。SFRPによる増殖抑制効果を検討するため、口腔癌細胞株にSFRP遺伝子発現ベクターを用いてSFRP遺伝子を強制発現させ、G418存在下で選択培養を行い、コロニーフォーメーションアッセイを行った。SFRP遺伝子を強制発現させ細胞株でコロニーの形成が抑制された。以上の結果から、口腔癌においてはSFRP遺伝子がDNAメチル化によって高頻度に不活化され、結果としてWntシグナル経路が活性化し、腫瘍の形成が促進されている可能性が示唆された。
|