MIA (melanoma inhibitory activity)はメラノーマの進展に関与するマーカーのひとつである。申請者らは口腔扁平上皮癌においてMIAが核クロマチンタンパクであるHMGB1と相互作用することでVEGF-C/Dを介したリンパ管新生を誘導し、リンパ節転移を促進することを既に報告している。あらたにMIAと脈管新生の関係の詳細について検討した所、口腔扁平上皮癌細胞株のMIA siRNA処理によりVEGF-C/DのみならずVEGF-Aの発現も抑制され、またMIAは口腔扁平上皮癌の増殖、浸潤およびアポトーシス抵抗性に関与することが明らかとなった。口腔扁平上皮癌材料を用いた検討ではMIAはVEGF familyの発現を誘導することで血管新生、リンパ管新生を促進し、さらにMIA高発現症例は低発現症例と比較して有意に予後不良であった。他のMIA gene familyであるMIA2、MIA3、OTORについてはMIAと50%近い相同性を有していたが、OTORは蝸牛にのみ発現が限局されており、MIA2は口腔扁平上皮癌の宿主免疫の撹乱に、MIA3はPDGFBBを介した口腔扁平上皮癌の血管新生・リンパ管新生の亢進に関与しており、同じgene familyでもそれぞれ異なる機能を有していることが明らかとなった。さらにMIA、MIA2、MIA3をそれぞれノックダウンした口腔扁平上皮癌細胞株と無処理の口腔扁平上皮癌細胞株を用いてマイクロアレイを行ったところ、いずれも未知の新規シグナルが活性化されることで遺伝子発現が亢進することを見出した。以上より口腔扁平上皮癌においてMIA gene familyを分子標的とした治療が有用である可能性が強く示唆された。
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