本研究は、人工骨を用いた骨膜伸展により生じた母骨と骨膜の間隙に骨形性因子を導入することで、低侵襲で、早期の骨新生を獲得する新たな骨造成法を開発するもである。これは従来の骨移植や骨延長といった自家骨を応用する骨造成法とは異なり、膜性骨化様式を応用した再生療法の一つであり、患者にかかる負担の軽減と、より安定性の高い骨造成を獲得するのが目的である。 昨年度は人工骨(β-TCP)ブロックをイヌ下顎骨外側骨面に移植し、舌側からの伸展刺激を加える研究を行った。対照群としては人工骨ブロックの移植のみを行ったが、こちらにおいても人工骨内部の新生骨の増生による骨への置換を認めた。使用した人工骨は気孔率70%前後と、比較的多孔質であった。強度的な問題が危惧されたものの、イヌ顎骨内での使用には問題なく、研究においては十分であった。多孔質である空間に新生骨が認められ、骨新生の足場としては適切な材料であると考えられた。しかしながら伸展群では骨造成量に限度はないが移植群では、従来の移植の問題点と同様に、軟組織閉鎖の観点から限界があると考えられた。さらに早期の新生骨獲得と安定性の向上をはかり、人工骨-母骨間の間隙への骨形成因子(BMP)の注入を行ったものの、増生量の不安定性とコスト面での負担が問題であり、十分な結果が得られなかった。骨形成因子の緩徐な導入をはかるため何らかの媒体となる物質を応用するべきだと考えられた。
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