研究概要 |
口腔癌の治療成績の向上に早期診断は不可欠な要素であり,とくに所属リンパ節転移や局所再発の早期診断には日々の癌治療において大変苦慮するところである.所属リンパ節転移や局所再発の画像診断としては,現在,X線CT,MRI・PET・超音波検査などが有効な手段として常用されている.しかし,微小な転移巣の診断は,結局のところ摘出組織標本の病理組織学的診断に委ねざるを得ないのが現状である.微小な転移巣や局所再発の早期診断法の開発が望まれる. まず、口腔扁平上皮癌の治療のために,超音波発振装置(ソニトロン2000)とナノバブルを用いたソノポレーション法を検討した.扁平上皮癌細胞の表面に過剰発現している上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Recepter:EGFR)に着目し,そのリガンドである抗EGFR抗体を介した導入法の開発を試みた.DNA-ナノバブル-抗EGFR抗体混合溶液を作成し,in vitroの実験系でEGFR保有ヒト癌細胞ならびに,EGFR非保有細胞への遺伝子導入をおこなったところ,EGFRが高発現しているヒト扁平上皮癌細胞で明らかな導入効果の増強が認められた.次にヒト歯肉扁平上皮癌(Ca9-22細胞)をヌードマウスのフットパッドに接種し担癌マウスを作成した.腫瘍支配動脈である大腿動脈にナノバブルとBleomycinを投与し,投与と同時に癌組織に超音波を照射したところ,抗腫瘍効果を確認した。現在、コントロール群と導入群の腫瘍の体積変化と血管密度を高周波超音波イメージング装置で測定中である. まだ、舌癌の深部切除マージンの決定法の開発として、4-Nitroquinoline 1-Oxide誘発舌癌ラットモデルを作製した.超音波モニタリング下に腫瘍の範囲を確認し,腫瘍の最深部から5mm下方にマーカーとして留置針の針先を固定後,その留置針をガイドとして客観的に腫瘍を切除した.その後,腫瘍の浸潤発育先端を確認し,腫瘍の深達距離および切除クリアランスの確認を行った.超音波診断による深達度と病理組織標本での深達度を比較したところ,両者はよく相関していた.
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