研究概要 |
癌組織は実質、間質からなり、多様な細胞によって構成されているが、一部の癌組織のなかには正常組織幹細胞と同様に自己複製能と多分化能といった特徴を有する細胞の存在が明らかとなりつつあり、これは癌幹細胞(Cancer stem celis;CSCs)と定義されている。本課題では、口腔癌原発巣に対し、口腔扁平上皮癌CSCsの分離・同定後、その機能解析および発現遺伝子群プロファイリングを行い、口腔扁平上皮癌の発生や進展におけるCSCsの役割を明らかにし、最終的には口腔扁平上皮癌CSCsをターゲットとした新たな分子標的による癌治療の確立を目指すことを目的とした。申請者はこれまでに、300種類もの細胞表面抗原をスクリーニングし、マウス骨髄由来間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells;MSCs)に対して特異的な抗原の組み合わせを見つけ出すことに成功した。さらに、これらを指標にフローサイトメトリーを用いMSCsを一切培養操作を経ずに、従来法に比べ約120,000倍の効率で直接精製する方法を世界に先駆けて確立した。口腔癌CSCs特異的なの細胞表面抗原についても、これまでの正常組織幹細胞(造血系幹細胞・間葉系幹細胞・神経堤幹細胞)の解析で行われてきたような手法でアプローチを試みたが、新規のCSCs特異的マーカーをみつけるには至っていない。そこで口腔扁平上皮癌患者から樹立した細胞株を用いてこれまでにヒアルロン酸レセプターであるCD44に注目した。 CD44は乳癌や大腸癌などいくつかの固形癌における癌幹細胞の表面マーカーであることがすでに報告されており、頭頸部癌においても報告されている。そこで現在、口腔癌幹細胞におけるCD44の機能解析を行っている。
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