口腔癌はその発症機序として、癌抑制遺伝子の機能不全、癌遺伝子の発現増強にみられるジェネティックな変化と、DNAのメチル化、ヒストンのアセチル化等のエピジェネテックな異常が蓄積して発症する、多段階発癌であると考えられている。口腔癌の治療成績は、医療技術の発展、癌に対する臨床的・基礎的研究の進歩により、治療成績や予後は良好な結果になってきているが、未だ予後不良症例・再発症例等が存在し、新たな治療標的の検索が求められている。本研究では、(1)口腔扁平上皮癌細胞株を使用したDNAメチル化の網羅的な解析、(2)臨床材料におけるDNA異常メチル化の解析、(3)口腔癌、他領域扁平上皮癌細胞株を使用した、同定された異常メチル化候補遺伝子の機能解析を行うことにより、エピジェネティックな変化を指標とした新規口腔扁平上皮癌の治療標的を検索する事を目的とする。平成21年度は、MeDIP-chip法を用いて、未だ口腔癌領域において報告の見られない、DNAの網羅的なメチル化の解析を行う。結果を解析し、DNAの異常メチル化部位について数遺伝子候補を挙げる。また、MeDIP-chip法を用いて得られた結果をMSP、バイサルファイトシークエンスを用いてメチル化候補領域の確認を行う。平成22年度は、口腔扁平上皮癌組織・正常組織からDNAを抽出する。MeDIP-chip法で同定された結果のバリデーションを行い、異常メチル化遺伝子の口腔扁平上皮癌組織におけるメチル化の有無について確認する。各候補遺伝子の絞込みを行い、機能解析を行う遺伝子を決定する。平成23年度はさらに研究を発展させる予定であり、口腔扁平上皮癌、食道、肺扁平上皮癌細胞株を用いて、機能解析を行う。得られた実験結果を総括し、関連学会で発表するとともに、専門学術雑誌に論文を投稿する。
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