口蓋裂発生メカニズムの解明を目的に、1)口蓋癒合期の基底膜の観察及び2)口蓋の器官培養法の確立を行った。 1)口蓋突起癒合期には、上皮索基底膜において、パールカンおよび、コラーゲンIVの消失が観察された。口蓋突起上皮細胞が分泌したヘパラナーゼはパールカンのヘパラン硫酸鎖に抱合されている増殖因子を遊離・活性化することにより、間葉系細胞の分化・増殖を惹起する可能性が推測された。また、口蓋突起上皮細胞が分泌したMMP (matrixmetalloproteinase)は、コラーゲンIV分子を細分化することで、上皮索基底膜の分解に関与することが示唆された。 2)口蓋は、非常に短時間で形成されるため、口蓋の器官培養法が確立されることで、in vivoで観察しにくい左右口蓋突起癒合時期の、細胞・分子レベルでのシグナル伝達を経時的にとらえることができ、組織学的にも上皮索基底膜の詳細な検討ができる点で意義深い。 妊娠マウスを妊娠12日目に帝王切開し、マウス胎仔の眼窩下部で頭部の上部を切除し、次に口蓋を通る水平断面で下顎を切除した。採取した口蓋をミリセルカルチャーインサートの膜(ミリポア)を上にし、その上に乗せた。膜には2mm程度の切れ目を入れておき、口蓋突起部が同部に収まるように乗せ、in vivoに近い条件となるようにした。口蓋を乗せた膜は6ウェルプレートに置き、口蓋が浸る程度にMEMを添加した。5%CO2下に37℃で培養し、2時間後に余分なMEMを除去した後、DMEM/F12(1:1)を入れ(この時間を培養0時間とする)、24時間、48時間、72時間培養した。培養後、切片の作製およびヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を実施した。72時間においては、口蓋の多数の細胞で核濃縮を認めた。24時間培養した口蓋突起において、細胞数の増加と口蓋突起の挙上、伸長を認めた。48時間においても同様であった。口蓋裂発生メカニズムの解明のための口蓋器官培養はほぼ確立したといえる。 22年度は器官培養系においても、1)の実験を行っていく。
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