顎関節症などに代表される慢性筋痛は女性に多いという特徴がある。そこで、慢性筋痛の性差にATPが関与するか検討を行うために、安定した慢性筋痛モデルの作成を試みた。当初は咬筋で筋痛モデルを作成する予定であったが、適当な行動学的指標が存在しなかったことから、すでに行動学的指標が確立している腓腹筋に対し、von Frey testならびにRanndall-Selitto testを用いて慢性筋痛の作成を試みた。作成の方法は、過去に筋痛モデルとして報告されている、(1)3%カラゲニンの筋注モデル、(2)5%高張食塩水の繰り返し筋注モデル、ならびに(3)伸張性収縮運動による筋痛モデルの3つを検討した。その結果、(1)カラゲニンの筋注モデルでは一過性に皮膚の痛覚過敏がみられるものの、6週間ほど安定した筋痛が得られたが、(2)高張食塩水のモデルでは長期間安定した筋痛は得られなかった。また、(3)伸張性収縮運動によるモデルは、筋痛は作成されるものの、痛みは短時間であり、慢性モデルとしては妥当ではなかった。そこで、今回はカラゲニンのモデルを採用することとし、Caudalisから記録された侵害受容(NS)ニューロンを指標に、咬筋に3%カラゲニンを注入したときの変化を検討した。咬筋にカラゲニンを注入してしばらくすると、NSニューロンの受容野は拡大し、ピンチによって得られるニューロンの閾値にも低下がみられる傾向にあった。まだ、例数が少ないため詳細な傾向はつかめていないが、カラゲニンの筋注により痛覚過敏が認められたことから、カラゲニンモデルは筋痛モデルとして妥当であると考えられた。
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