研究概要 |
ホウ素中性子補足療法(Boron Neutron Capture Therapy : BNCT)はホウ素化合物が集積した腫瘍細胞に中性子を照射することで腫瘍細胞を破壊する治療方法である。現在使用されているホウ素化合物のBorocaptate(BSH)は能動的に腫瘍細胞に集積する性質がないため、腫瘍細胞に高濃度のホウ素化合物を送達できるDDSが期待されており、Liposomeを用いた研究が多施設で行われている。今回われわれはLiposomeにTransferrinを修飾し、腫瘍細胞で過剰発現しているTransferrin receptorをターゲットとしたDDSを使用して、京都大学原子炉実験所にて実際に中性子を照射し、腫瘍殺効果について検討を行った。 1.腫瘍細胞を無血清培地で培養し、Bare-BSH, PEG-Liposomal BSH, TF-PEG-Liposomal BSHを使用した群に分けた。各々50PPMのホウ素濃度になるように培地を作成し、各群6時間細胞に暴露させ、6時間後に培地を除去。ホウ素を50PPM含む培地、もしくはホウ素を含まない培地に細胞を1×10^5個/mLに希釈し、テフロンチューブに移し照射のサンプルとした。中性子をあらかじめ設定した時間照射。中性子照射後、細胞を200個/シャーレに調整し7日間培養しcolony formation assayを行った。結果、中性子照射時にホウ素を含む培地を使用した場合いずれの群でも腫瘍殺効果が得られたが、照射時にホウ素を含まない場合にはTF-PEG-Liposomal BSHについてのみ強い腫瘍殺効果が得られた。 2、口腔扁平上皮癌細胞の担癌マウスを作製し、尾静脈より各種修飾をしたホウ素化合物を静注し、事前に予測された血中有効濃度の時に中性子を照射、その後腫瘍サイズの計測を行いBNCT効果について検討を行った。結果、TF-PEG-Liposomal BSHを使用した群では腫瘍サイズの著明な現症を認めた。 これらのことから、TF-PEG-LiposomeをDDSとして使用することによりBNCT効果の更なる向上が図れることが示唆される。
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