研究概要 |
本研究は、硼素中性子捕捉療法(BNCT)を口腔外科領域で確立することを目標としており、当科では、平成17年度よりBNCTによる非手術適応の頸部リンパ節転移を含む再発口腔癌患者に対する治療を行っている.臨床的には従来の治療と比較し,本療法は明らかに優れた局所制御効果を示している。また、臨床的には完治に至らない場合も、疼痛を抑制し出血を減少させるなど、患者のQOLを改善し、生命予後の改善に寄与している。今までに6名に対し計10回施行しているが、全例で腫瘍の縮小傾向を認め、従来の放射線療法に見られる重篤な口内炎や皮膚障害、骨髄炎などの副作用もなく生命予後の改善に貢献している。従来放射線療法や化学療法が奏効し難いと思われている腺癌や極めて悪性度の高い悪性黒色腫にも縮小効果を確認している.しかしながら、口腔癌治療において硼素中性子捕捉療法(BNCT)を確立するためには、さらに臨床例を検証検討する必要があると思われる。 本年度はBNCTの施行患者の経過追跡、予後判定等の研究を行った。また、BNCT時の患者固定、中性子防御法について中性子遮蔽用マスクの試作を行った。 BNCTの有効性 腺癌、悪性黒色腫等、放射線感受性が低いとされている組織型にも効果を認め、従来手術が第一選択とされてきた疾患に対しても応用できる可能性が示唆された。 従来の放射線療法では、エックス線を70Gy程度を照射するが、急性期の副作用として重篤な口内炎咽頭炎があり途中で休止せざるを得ないことが多く、休止しても回復に数週間要するが、BNCTでは照射野に口内炎は認められるものの、数日から2週間以内で回復し、患者の負担も軽微であった。また頭頚部の放射線療法では晩期障害として重篤な顎骨骨髄炎を認めるが、最終BNCT後経過観察しえた限り見られない。
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