研究課題
Factor-Xはクマザサ抽出液から分離・同定された分子量330のフラボン誘導体である。従来クマザサには多くの薬理作用があることが報告されているが、近年我々はクマザサ抽出液の持つ抗ウイルス効果および抗腫瘍効果に注目し検討を行ってきた。その中で、我々の共同研究者である岐阜大学生命科学研究支援センターのチームにより、有効成分を含むFractionからFactor-Xが分離・同定されたが、その後の解析により、Factor-XはTricin(4',5,7-trihydroxy-3',5'-dimethoxyflavone)であることが同定され、その合成にも成功した。本研究では、現在解析をすすめているFactor-X=tricinの持つ生物学的活性のメカニズムをinvitro、さらにはin vivoにおいて明らかにすることを目的とする。同成分を用いた我々の予備的実験において、tricinは単純ヘルペスウイルス(HSV)への抗ウイルス効果、更に各種癌細胞株に対する増殖抑制効果・アポトーシス増強能を持つことが示唆された。更に、プライマリー正常細胞への影響、更に間質細胞へのtricinの効果を検討するため、肝硬変~肝癌の病理に重要な役割を果たすHuman Hepatic Stellate cellに対する効果について検討を進め、tricinがstellate cellのPDGF依存性増殖を抑制することを見出した。本年度は引き続き、同効果のメカニズム解析を行い、TricinのPDGFレセプターからのシグナル抑制作用について論文にて報告した。今後はtricin改変体を用いたin vivo実験、他の薬理作用についての解析を引き続き予定している。
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J Cell Biochem
巻: (in press)
DOI:10.1002/jcb.24107