医科領域における再生研究では、ES細胞やiPS細胞を用いた治療法の開発と、各組織への分化誘導法の検討がおこなわれてきた。しかしながら、歯科再生医療において、歯胚再生を目的とした治療法の開発がおこなわれているが、現時点ですぐに臨床応用可能な技術の開発には結び付いておらず、乳歯を用いた歯髄幹細胞の応用が報告されている程度である。また、歯髄幹細胞とは、歯髄中に約1-2%程度存在している細胞集団で、神経細胞、脂肪細胞、骨芽細胞に分化しうる他分化能を有すると報告されている。しかしながら、実際の再生治療に応用するには、細胞数の少なさから困難である。 そのため、本研究では万能細胞から歯関連幹細胞への分化誘導法の開発を行い、再生歯科治療に十分な量の細胞を供給する方法を開発することを目的としている。 我々の研究グループでは、ES細胞につきまとう倫理的な問題のない、iPS細胞を用いている。歯の再生医療への足がかりとして、マウス由来iPS細胞と、動物種の異なる、ラット由来のアメロブラスチン高発現エナメル芽細胞株SF24を、フィーダーとして共培養させ、in vittroにおいて、マウスiPS細胞を、エナメル芽細胞に分化させることに成功した。すなわち、大量の細胞を入手することが可能である、ヒト以外の動物種由来の歯関連幹細胞をフィーダーとして用いることにより、従来、再生治療に十分な量を確保する事の困難であった、ヒト由来の歯関連幹細胞を、iPS細胞から生産できる方法の足がかりとなる知見である。
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