研究概要 |
栄養素の消化吸収とともに消化管から分泌されるインクレチンは、膵臓からのインスリン分泌を促し血糖値を下げる働きを持つが、近年インクレチンが骨代謝に関与することが報告されている。この消化管ホルモン「インクレチン」が歯槽骨再生における新規標的分子としての可能性をRNAiを用いて探ることが本研究の目的である。 初年度は、骨芽細胞に発現するインクレチン受容体(GIP-R,GLP-1-R)と糖代謝、骨代謝関連因子受容体の発現の検索と、糖代謝に関連して顎顔面領域の骨代謝に影響する因子の検索を行った。 In vitroにおける骨芽細胞培養系のモデルとしてMC3T3-E1(RIKEN CELL BANK)を使用し、GIP-R,GLP-1-R,Ob-Rb,AdrB-R等の発現をPCRで確認したところ、GLP-1-Rの発現は確認されずGIP-Rの受容体発現についても再現性が得られにくいことから、現在別系統の細胞を用いて骨芽細胞培養の実験系を確立中である。 一方、糖代謝に関連する因子として、インスリンに着目してモデル動物(STZ-Induced diabetic rat, Wistar fatty rat)の解析を行ったところ、耐糖能異常が頭蓋顎顔面骨および歯槽骨代謝に影響を及ぼし、特に頭蓋顎顔面骨においては深刻な成長発育不全がもたらされることが確認された。(European Journal of Oral Sciences 2010)以上の結果を踏まえ、現在はIn vivo, In vitro双方の実験系からインクレチンが顎骨、歯槽骨代謝に及ぼす影響とそのメカニズムについて今後も詳細な検討を行っていく予定である。
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