研究概要 |
近年,う蝕原性細菌Streptococcus mutansにおいて,感染性心内膜炎の原因菌として知られるStreptococcus mutansのコラーゲン結合タンパクであるCnaタンパクと相同性の高い約120kDaのCnmタンパクが同定された.これまでに,このCnmタンパクの日本人の口腔における検出頻度が約10~20%であることを明らかにするとともに,Cnmタンパク保有S.mutans菌株とう蝕および循環器疾患との関連についての研究を行ってきた.本研究では,Cnmタンパクをコードするcnm遺伝子を遺伝子操作により欠失させた菌株を作製し,その病原性に関して分析を行った.その結果,cnm遺伝子を欠失させた菌株では,コラーゲン結合能が失われるとともに,マウス脳出血モデルを用いた分析において,Cnmタンパクを保有する親株に認められたような脳出血の悪化が認められないことが明らかになった.また,諸外国におけるコラーゲン結合タンパク保有菌株の検出頻度を多数の臨床分離株を分離し検討したところ,フィンランド人やタイ人からの分離株においても日本とほぼ同様の割合で存在することを明らかにした.その後,感染性心内膜炎患者から高頻度に検出される血清型k型に分類されるS.mutansから,Cnmタンパクと相同性の高い新規のタンパクを同定し,Cbmタンパクと命名した.Cbmタンパクを保有する菌株では,Cnmタンパク保有菌株よりさらに高いコラーゲン結合能を保有していることが明らかとなったことから,その病原性に関する研究を現在進めている.
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