研究概要 |
本研究目的は幹細胞に適切な位置情報を付与し、象牙芽細胞やエナメル芽細胞へと分化させる事であった。本年度はその解析ツールとして必要な免疫組織学的染色、in situ hybridization法の改善を行った。その結果従来では検出不可能であったシグナルも検出可能なプロトコルを確立した。また幹細胞への位置情報付与については、従来の歯胚再構成の方法(Nakao et al.Nat Methods,2007 Mar;4(3):227-30.)に変更を加え実験を行った。具体的には再構成歯胚を作製する際に幹細胞(ES細胞)を歯原性間葉に散布し、歯原性上皮と再構成を行う事により幹細胞の適切な分化誘導を試みた。その結果、ES細胞から完全な象牙芽細胞、エナメル芽細胞への分化誘導は果たせなかったものの、この再構成体の中で幹細胞が上皮様の組織に分化する事を発見した。また、散布するES細胞数が多い場合には歯胚は形成されず、適切なES細胞数の時にのみ、歯胚は形成される事を見出した。この事は幹細胞に適切な位置情報を再構成歯胚の中で与える為には散布するES細胞の数量が一つの重要な因子になる事を意味する。更に我々はエナメル質の分化が抑制された遺伝子改変マウスも作製しており、そのマウスを用いてエナメル芽細胞の分化機構の解明にも取り組んでいる。これらの実験を更に本年度で更に発展させ、また、エナメル質形成不全のマウスの知見も合わせ、幹細胞の象牙芽細胞やエナメル芽細胞への適切な分化誘導法の開発に取り組む予定である。
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