研究概要 |
私はこれまでの研究によりA.aのLPSが骨芽細胞分化を抑制し,かつ細胞間ネットワークも抑制することを明らかにした。細胞間ネットワーク阻害と分化抑制の相関関係については,すでにいくつかの報告がなされていることから,今回,細胞間ネットワークを司るCx43の発現に及ぼすA.a培養上清の影響の検討とCx43の細胞内局在に及ぼすA.a培養上清の影響の検討を行った。 マウス由来正常骨芽細胞MC3T3-E1にA.a培養上清を添加し24時間培養後RNAの抽出を行い,Real-time RT-PCRを行ったところ,Cx43のmRNAの発現に全く影響を与えなかった。また,ウエスタンブロットの結果からもReal-time RT-PCRの結果と同様に細胞全体のCx43の量はA.a培養上清添加で変化しなかった。さらにCx43のバンドが上方へシフトしていないことより,Cx43のリン酸化への影響も認められなかった。ところがA.a培養上清添加で膜タンパク画分中Cx43は顕著に減少していた。免疫染色の結果からは,コントロール細胞ではCx43のプラークが細胞の伸長方向先端や細胞同士の接合部に多く存在しているのに対し,A.a培養上清添加後ではCx43は核の周りや細胞質内に存在していた。 したがってLPSによる細胞間ネットワーク阻害と関連があるのはCx43の細胞内の局在の変化であり,免疫染色の結果とあわせてもLPSがCx43の細胞膜への局在を阻害することで細胞間ネットワークを障害する可能性が高いと考えられた。 今回の結果は小児における侵襲性歯周炎の発症メカニズムの限定的な一面を検討したに過ぎないが,これまでに十分検討がなされていなかったA.aのLPSの骨形成系への影響を明らかにしたものである。
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