研究概要 |
私はこれまでの研究でA.aのLPSをMC3T3-E1の培地に1nMおよび10nM添加して培養し,LPSが分化へ及ぼす影響を検討し,5%A.a培養上清中のLPS濃度とほぼ等しい10nMA.aLPS添加時の阻害は5%A.a培養上清の阻害とほぼ同程度で,A.aのLPSが骨芽細胞分化を抑制することを明らかにした。5%A.a培養上清添加に相当する10nM LPSを添加した場合にもA.a培養上清を加えた場合と同様に細胞間ネットワークは阻害され,細胞間ネットワークも抑制することを明らかにした。細胞間ネットワーク阻害と分化抑制の相関関係については,すでにいくつかの報告がなされている。そこで,MC3T3-E1を細胞間ネットワークを司るCx43の発現に及ぼすA.a培養上清の影響の検討とCx43の細胞内局在に及ぼすA.a培養上清の影響の検討を行い,LPSによる細胞間ネットワーク阻害と関連があるのはCx43の細胞内の局在の変化であり,免疫染色の結果とあわせてもLPSがCx43の細胞膜への局在を阻害することで細胞間ネットワークを障害する可能性が高いと考えられた。Cx43の細胞膜への局在が阻害されるためには'Cx43の粗面小胞体からゴルジ装置を経て細胞膜に至る輸送の段階の阻害か,あるいは細胞膜から細胞質への取り込みの段階の活性化の二つの可能性が考えられる。細胞膜上のCx43が細胞質内に輸送される場合にはCx43のリン酸化が生じるとの報告があるが,今回のウエスタンブロットの結果からはCx43のリン酸化は認められなかったことから,細胞膜から細胞質への取り込みの段階が活性化している可能性は少なく,細胞膜への輸送経路が障害されているのではないかと推察された。また,LPSによる分化抑制はTLR-4を介して行われるかの検討する予定であったが,明らかな結果が得られなかった。 今回の結果は小児における侵襲性歯周炎の発症メカニズムの限定的な一面を検討したに過ぎないが,これまでに十分検討がなされていなかったA.aのLPSの骨形成系への影響を明らかにしたものである。
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