本研究の属的は、fMRIを用いて咀嚼と脳機能の関係を明らかにすることである。今回我々は、咀嚼機能の脳への影響、特に不正咬合の脳への影響を調べた。 まず、通常咀嚼運動を行う座位とMRI撮影を行う時の抑臥位との間の咀嚼状態に差がないかどうかを確認した。具体的には、両体位においての筋機能、咬合状態を計測し比較した。その結果、両者の間に有意な差がない事がわかった。それを踏まえて、MRI撮影に入った。 まず、左側・右側に正中で二分割の可能なバイトプレートを作製した。そのバイトプレートを(1)右側のみ(2)左側のみ(3)両側(4)なしの4パターンにセットした状態で、タッピング運動を行い、MRIの撮影を行った。得られたデータを解析ソフトSPMにて解析した。その結果、(3)両側(4)なしの間に賦活領域面積の差が確認された。これにより、咬合状態の違いにより脳の賦活領域が変化することが示唆された。 次に、(1)右側のみ(2)左側のみのバイトプレート装着時の咀嚼運動における、脳賦活領域の状態の比較を行った。このそれぞれの状態では、バイトプレートがない側は上下歯列が接触しない状態となる。その状態での咀嚼の結果、興味深い事に(1)右側では右側の感覚運動野に、(2)左側では左側の感覚運動野に賦活が認められた。このことに関しては、神経の走行などを確認することによって、賦活領域との整合性を加味し、より詳しい咀嚼における神経支配の知見を得ることができると考えている。 このように、咬合の変化によって脳の賦活領域に変化が起こる可能性のある事が示唆される結果となった。
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