本年度は、低温スパッタリング法でコーティングした矯正材料の耐食性の評価ならびに機械的性質の検討を行った。 1.低温スパッタリング法による金属板・矯正材料の作成 矯正歯科で使用されるステンレスおよびニッケルチタン材料を低温スパッタリング法にてTiNでコーティングした。低温スパッタリング法はJINSAN ENG Co.LTD.製のアンバランスドマグネトロンスパッタ装置を使用した。 2.サイクリックボルタンメトリによる耐食性の検討ならびに表面観察 コーティング処理・未処理のステンレスおよびニッケルチタン材料を37℃の0.9%NaCl水溶液中で-0.6Vから+1.0Vの方向で、速度1mV/secで電位を掃引させた(HZ-3000、北斗電工株式会社)。耐食性の評価は動電位分極曲線の解析にて行った。コーティング処理をしたものと未処理のものでは耐食性に違いがあることがわかった。サイクリックボルタンメトリで、試料の電位を上昇させると、不動態皮膜が破壊されて孔食が生じる場合がある。光学顕微鏡にてサイクリックボルタンメトリ後の各種金属表面に孔食の有無を観察した。コーティング処理をしたものは未処理のものより孔食が少ないことがわかった。 3.コーティングしたワイヤーの機械的性質の試験 三点支持中央集中荷重法による抗曲試験を行うために、試験装置の試作、設定を行った。矯正材料の形状により安定した計測のためには、装置に工夫が必要であることがわかった。 以上のことから、低温スパッタリング法でコーティングした矯正材料の耐食性は、未処理のものより優れていることがわかった。
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