本年度は、低温スパッタリング法でコーティングした矯正材料の機械的性質の検討を行った。 1.低温スパッタリング法でコーティングした矯正材料の作成 矯正歯科で使用される、既製のステンレスおよびニッケルチタンワイヤー、ブラケット、バンド等め材料を低温スパッタリング法にてTiNでコーティングした。 2.コーティングしたワイヤーの機能性の評価 金属材料本来の機能性の維持を判定するために、コーティングしたワイヤーと未処理のブラケット間および未処理のワイヤーとコーティングしたブラケット間の摩擦測定を行った。摩擦測定には摩擦試験用ジグ、ブラケット固定用ジグを試作し、cross-head speed 10mm/min、movement 5mm、angulation0°10°で行った。0°と10°では10°の方が摩擦力が増大し、臨床で起こりうる角度の範囲での摩擦測定が可能となった。 3.コーティングした材料の耐食性の試験 コーティング処理・未処理のステンレスおよびニッケルチタン材料を37℃の0.9%NaC1水溶液、1% lactic acidに7日間浸漬し、溶出イオンをICP発光分析装置(ICP-OES)ULTIMA2にて測定した。コーティング処理をしたものと未処理のものでは溶出イオンの量に違いがあり、コーティングの成膜厚が影響することがわかった。 低温スパッタリング法はコーティングの成膜厚が薄く、密着性、耐腐食性および審美性にも優れている。またコーティングの際低温であることから金属の性状に影響をあたえないという特徴もある。そこで、本研究では、この低温スパッタリング法を利用して、金属の溶出を防げる、金属アレルギー患者用の矯正用材料の開発を行った。
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