本研究では、骨リモデリングに関わる骨芽細胞の分化過程における細胞増殖や細胞分化、あるいは機能活性に対する転写因子Msx2の果たす役割について解明するために、培養した分化段階の異なる骨芽細胞の分化過程における機能的な解析を主体とした『in vitro』の実験系と、矯正学的に歯を移動した際に生じる骨リモデリングにおける機能的解析を主体とした『in vivo』の実験系とに分けて、それぞれの実験を行う計画を立案した。 まず初年度である当該年度においては、『in vitro』の実験系から着手し、多能性幹細胞株であるマウス胚性幹細胞(マウスES細胞)およびマウス人工多能性幹細胞(マウスiPS細胞)のそれぞれ異なる未分化な細胞を用いて、骨芽細胞への分化を誘導し、骨形成を行わせる培養系の樹立に向けて予備実験を進めていった。実験による試行錯誤(数パターン)の結果、培養系の最終日に骨(骨様ノジュール)を形成させることに成功した。しかしながら、形成された骨量は少なく、より安定した再現性を得るためにも、この培養系を基盤としていくつかの条件を変えながら検討を続けている。 今後は、この培養系にMsx2の遺伝子を導入し、その直接的な転写因子Msx2の効果についての検討を行う準備をしている。また、この培養期間中の経時的・経日的なMsx2の発現変化や、それに伴う骨基質タンパクや骨関連因子の発現、ALP活性の変化および骨形成能についての画像解析を行い、さらに同様の実験系に異なる刺激を与えた場合のそれぞれの応答についての検討も加える予定である。
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