本研究では、骨リモデリングに関わる骨芽細胞の分化過程における細胞増殖および細胞分化、あるいは機能活性に対する転写因子Msx2の果たす役割について解明するために、未分化な幹細胞を培養して、骨芽細胞へと分化させることにより骨様ノジュールを形成させた。 研究の初年度では、多能性幹細胞株であるマウス胚性幹細胞(マウスES細胞)およびマウス人工多能性幹細胞(マウスips細胞)のそれぞれ異なる未分化な細胞を用いて、骨芽細胞への分化を誘導し、骨様ノジュールの形成を行わせる培養系の樹立に向けて予備実験を進めていった。その結果、培養最終日(30日目)に骨様ノジュールを形成させ、培養系としての基盤を確立したが、以前として骨の形成量をさらに増加させることは困難であった。 そこで当該年度において、この培養系にMsx2の遺伝子を導入し、その直接的な転写因子Msx2の効果についての検討を行うこととした。幹細胞への遺伝子導入を行い、それに伴う骨様ノジュール形成量およびALP活性の変化を観察した。また、この培養期間中(30日間)の経時的・経日的なMsx2の発現変化や、それに伴う骨基質タンパクおよび骨関連因子の発現について検討するために、培養細胞よりTotalmRNAを採取し、RT-PCRを行った。現在、これまでのデータを収集・解析し、これらの結果をとりまとめて、発表準備を進めている。また、さらに今回の実験を発展させるべく、この実験系に異なる刺激を与えた際の各種応答についても計画進行中である。
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