研究概要 |
本研究では、1,25-dihydroxyvitamin D3 (VD3)を培養上皮細胞に添加することにより上皮細胞の分化の促進と抗細菌性ペプチドの発現変化を観察することを目的とした。 ヒト正常表皮角化細胞株(HaCaT細胞)を10%FBS含有DMEMで、ヒト正常角化細胞(NHEK細胞)をKGM(FBS非含有KBM)にて培養を行った。各培地にてVD3を0、1、10、100nM添加し、各濃度において4、8、24、48、72時間培養を行い、RNAを採取後、cDNAに逆転写し、Real-Time PCRにて定量的解析を行った。また、培養細胞をチャンバースライド上にて培養後、蛍光免疫組織染色にて観察した。 VD3による分化度の指標には、Claudin(Cla)-1、4、Occludin(Ocl)およびZO-1を使用し、抗細菌性ペプチドでは、ヒトβデフェンシン(hBD)-1、2、3およびcathelicidin(LL-37)を使用した。 抗細菌性ペプチドの発現変化では、HaCaT細胞およびNHEK細胞において、LL-37がVD3の濃度および時間に比例し、著明な発現上昇を認めた。また、hBD-2、3においてはVD3の添加により軽度上昇を認めたが、hBD-1では有意な発現は認められなかった。 分化度では、HaCaT細胞においてVD3添加することによりCla-4が、100nMから有意な発現上昇を認めた。しかしCla-1は時間および濃度に比例し減少傾向を示した。 以上から、VD3を添加することにより抗細菌性ペプチドであるhBD-2、3およびLL-37の発現上昇による化学的防御機構が上昇し、Tight junctionであるCla-4の機械的防御機構の増強がみられるため、小児の歯肉の様に角化が乏しく、細胞間結合も疎な患者にVD3は非常に有用であることが示唆された。
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