研究概要 |
生体内では,細胞周期が停止した静止期破骨細胞前駆細胞(cell cycle-arrested quiescent osteoclast precursors: QOP)が骨芽細胞におり,数週間支持されることを確認し,この支持環境を破骨細胞ニッチと名づけた.平成21年度は,生体内におけるQOPの出現へのc-Fosの役割について、c-Fos欠損マウスを用いて検討することで代謝性骨疾患ならびに,歯科矯正分野における骨改造現象への関連について明らかにすることを目指した.c-Fos欠損マウスの骨組織におけるQOPの存在を,QOPマーカー(RANK)の免疫染色により解析した結果,c-Fos欠損マウスの脛骨にはRANK陽性細胞(QOP)は認められなかった.c-Fos欠損マウスの骨組織におけるRANKの発現量は,mRNAおよびタンパク質レベルで、RANKL欠損マウスより低値であった.c-Fosは、RANKの発現上昇を介してQOPの形成に寄与することが明らかになった。(第27回日本骨代謝学会学術集会).さらに,c-Fos欠損マウス由来のマクロファージへRANKを過剰発現させることで破骨細胞形成がレスキューされるか,実験系を確立し現在進行中である.またc-FosのRANK上昇メカニズムの詳細についてはいまだ解明できていないため,c-Fosがどのような環境化においてRANK発現を上昇させるのか,破骨細胞前駆細胞における,RANK発現上昇誘導因子としてのc-Fosの役割についてさらなる解析を行う予定である.
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