平成22年度の研究においては、神経細胞死の動態を解析するためにTUNEL染色、Single Standard DNA( ssDNA)を用いてアポトーシス細胞の免疫組織染色を行ったが予定通り進行しなかった。理由として、TUNEL染色は手技が複雑で染色にまで至らず、ssDNAによる免疫組織染色に手技を変更したところ、染色されるアポトーシス細胞がほとんどなくコントロール群と早期喪失群で有意な差が認められなかった。ストレスの強さがアポトーシス細胞が生じる大きさではなかったと考えられる。そこで、免疫組織染色により海馬におけるグルココルチコイドレセプター(GR)の染色・計測を行い、早期の抜歯が視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA-axis)に与える影響の検討を行った。GRは血中のストレス物質であるグルココルチコイド(GC)と結合することにより、HPA-axisへのネガティブフィードバック機構が作用しGCの分泌を抑制する作用がある。一般的に慢性ストレス環境下では、GRのダウンレギュレーションが起こるとされているため、GRの発現状況を調べることで血中のGCとの結合能を検討した。GCは生体がストレスに曝されると過剰に分泌し苔状線維終末からグルタミン酸の放出を促進させ、血中のGCと相乗的に働いて海馬の神経細胞死を引き起こすと報告されている。平成22年度の染色結果から、早期喪失群はコントロール群に比較して海馬CA1およびDG領域でGRが減少している傾向が認められた。平成23年も引き続き匹数を増やして、GRの免疫組織染色を行う予定である。
|