平成22年度に引き続き、免疫染色により免疫組織染色により海馬におけるグルココルチコイドレセプター(GR)の染色・計測を行い、早期の抜歯が視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA-axis)に与える影響の検討を行った。その結果、早期喪失群はコントロール群に比較して海馬CA1およびDG領域でGRが有意に減少した。さらに、歯の早期抜去による生体への影響を調べるため血中のコルチコステロン(CO)濃度を測定した。COは副腎皮質の束状帯から分泌され慢性ストレスの暴露時に強い作用を示す。結果、早期喪失群ではコントロール群に比較して血中CO濃度が有意に上昇した。これは、歯の早期喪失が生体に慢性のストレッサーとして作用したことを示唆している。 平成21年度の研究結果において、早期の抜歯により空間認知能が障害され、海馬歯状回での新生細胞が減少することが明らかとなっている。平成22年度の研究結果により、歯の早期喪失によりストレス物質である血中CO濃度が上昇し、海馬におけるGRのダウンレギュレーションが起こりGRが減少し、その結果、海馬から視床下部へのネガティブフィードバック機構が抑制され、さらに上昇したGCレベルが、海馬の神経細胞障害を引き起こし、その結果空間認知能の低下が惹起されたと考えられる。 また平成21年度からの研究結果について、総合的に分析し、論文作成を行いPediatric Dental Jounalに投稿を行い現在査読中である。
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