今回の研究により、早期の歯の抜去が生涯を通しマウスの海馬機能に与える影響を検討した。血中コルチコステロン濃度の計測により歯の早期喪失は成熟期以降のSAMP8マウスにおいて慢性ストレスとして作用していることが明らかとなった。また、モリス水迷路学習テストを行い、歯の早期喪失は加齢に伴う空間認知能の低下をさらに加速させることが分かった。また、海馬における新生細胞数は歯の早期喪失により顕著に減少した。さらに、探索行動はコントロール群の新生細胞数を増加させたが、実験群の新生細胞群数は探索行動をしても変化が認められなかった。探索行動が海馬歯状回における細胞新生を増加させることを報告していることから、歯の早期喪失によって生じる新生細胞数の減少は、海馬内での神経ネットワークの形成を障害し、海馬の空間認知能を減衰させている可能性が示唆される。
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