矯正歯科治療を成功させるために最も配慮しなくてはならないことに固定源の確保があげられる。そこで、患者の負担が少なく、確実かつ効率的な新しい矯正歯科治療法の確立を目的として、破骨細胞抑制剤であるリベロマイシンAやビスホスホネートを用い、局所における破骨細胞の形成、活性化をコントロールし、歯の移動を制御する実験を行うこととした。 平成23年度の研究業績として、昨年度までに引き続き、破骨細胞の活性を抑制した際の、局所における骨芽細胞への影響について検討を行った。昨年度は、ビスホスホネートによって、破骨細胞のみならず、骨芽細胞の活性をも正常化させることを確認した。つまり、破骨細胞から骨芽細胞への何らかの負のシグナル因子が存在することが考えられた。しかし、ビスホスホネート自体が骨芽細胞に直接作用する可能性が否定できないことから、破骨細胞のみを選択的に抑制する薬剤として、リベロマイシンAを用い、同実験を行い、破骨細胞と骨芽細胞のインターラクションを解明していくこととした。 その結果、リベロマイシンAによって破骨細胞の活性を特異的に押さえた場合、ビスホスホネートと同様に、高値であった血中におけるアルカリフォスファターゼ活性を低下させ、免疫染色によるRUNX-2の発現時期を正常化させたことより、骨芽細胞の活性を正常化させる働きが認められた。これらのことから、やはり破骨細胞と骨芽細胞の間には、何らかの負のシグナル因子が存在することが示唆された。今後この因子について明らかにすることは、代謝のメカニズムや、様々な骨疾患の治療法の解明に貢献するものではないかと推察している。
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