研究概要 |
前年度の研究成果より、細菌の細胞壁に含まれる成分であるペプチドグリカンの活性中心構造であるiE-DAPは、樹状細胞(DC)に発現するnucleotide-binding oligomerization domain 1 (Nod1)を介して認識されることにより、クロスプライミングの誘導が増強されることが明らかとなった(J. Immunol., 184:736-745, 2010)。本年度は同知見を踏まえて、歯周病原性細菌Porphyromonas gingivalisおよびその細胞壁に含まれる成分であるfimbriaeおよびリポペプチドを用いて、DCによるクロスプライミング誘導に対する影響について検討した。その結果、DCをP. gingivalis加熱死菌,fimbriae, もしくはリポペプチドにて刺激すると、共刺激分子であるCD40およびCD86の発現が著明に上昇した。さらに、DCをP. gingivalisにて刺激すると、卵白アルブミン(OVA)により誘導されるクロスプレゼンテーションが増強された。ナイーブCD8^+T細胞にクロスプライミングを誘導するには、共刺激分子およびクロスプレゼンテーションの誘導が共に増強される必要があることから、同知見からP. gingivalisによりDCを介したクロスプライミングの誘導が増強されることが示唆された。 また、自然免疫応答の誘導に関わるToll-like receptorリガンドを介した炎症性サイトカインの生産におけるP. gingivalisの影響について検討した。その結果、P. gingivalisの刺激により細菌細胞壁成分であるリポポリサッカライド(LPS)によりDCから生産されるinterleukin-10は、相乗的に増強された。しかしながら、LPSによるDCからのIL-6生産は、P. gingivalisの刺激による影響を受けなかったことから、P. gingivalisによりTh1応答の誘導が抑制されることにより、歯周炎に特徴的な慢性炎症を反映することが考えられる。
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