研究概要 |
歯周炎は様々な全身疾患のリスクファクターであり、早期低体重児出産にも影響を及ぼしていることが明らかになってきている。近年、早期低体重児出産を引き起こす疾患として、抗リン脂質抗体症候群が注目されている。抗リン脂質抗体症候群では、血液凝固の抑制に重要なR-2 glycoprotein-I(β2GPI)に対する自己抗体であるβ2GPI依存性抗cardiolipin抗体が上昇することが知られている。これまでの研究で、歯周炎患者では健常者と比較してβ2GPI依存性抗cardiolipin抗体が上昇していること、またβ2GPI上のTLRVYKペプチドを認識するモノクローナル抗体をマウスに注射することにより血栓や早産が引き起こされることが報告されている。このTLRVYKペプチドと相同性を有する細菌の感染によって、β2GPIと交差反応をする抗体が産生され、その抗体が血栓や流産を引き起こすことがマウスを用いた研究で明らかになっている。P.gingivalis, T.denticola, A.actinomycetencomitansは、β2GPI上のTLRVYKペプチドと相同性が高いペプチド配列を有している。これらの結果に基づき、私たちは歯周病原細菌に対する抗体がβ2GPI上のTLRVYKペプチドと交差反応を引き起こし、抗リン脂質抗体症候群に類似した早期低体重児出産を引き起こしている仮説をたて研究を行った。ウサギに抗TLRVYKペプチド、交差反応を起こす可能性のあるペプチドを接種し、リガンドカップリングカラムでそれぞれの抗体を精製した。被験者として早期低体重出産の可能性が高い妊婦を対象に、東京医科歯科大学歯学部附属病院にて口腔内検査、同医学部附属病院で血清の採取を行っている。
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