フィブリノゲン(血液凝固I因子)はIL-6の誘導により肝細胞において産生される急性期蛋白質であり、血液凝固・止血反応の最終段階において重要な機能を果たしている。フィブリノゲンは炎症状態では平常時の2~10倍にも増加し、高/低濃度のフィブリノゲン分泌は過度の血栓形成や出血傾向をもたす。特に高濃度フィブリノゲンは炎症性サイトカインを増加させ、炎症部位に多くの白血球を引き寄せるため、冠状動脈性心疾患や脳梗塞に対する有意な独立した危険因子として知られている。また、近年、歯周病の発症・進行との関連も指摘されている。それら疾患の易罹病性や病型、発症の機序にはフィブリノゲンの遺伝子多型、とりわけBβ鎖における遺伝子多型が大きく関わっていると言われている。しかしながら、Bβフィブリノゲン・プロモーター領域における6種類の遺伝子多型の内4つには人種により連鎖不均衡が存在することがあり、その関係は複雑化している。 申請者はこれまでに、in vitro研究において6種類の遺伝子多型の内、1420G/Aと-148C/Tがサプレッサーとして、-854G/Aがエンハンサーとしての機能を有することを報告している(Immunol Invest2009)。そこで本研究において申請者は、日本人健常者におけるBβフィブリノゲン・プロモーター領域遺伝子多型の分布・発現頻度を解析し、連鎖不均衡の有無を明らかにすることを試みた。さらには、歯周炎患者においても同様の多型解析を行い、相関性を比較・検討した。本年度は歯周炎群35名、健常群30名のサンプリングを行った。前年度の結果と合わせて統計解析を行ったところ、日本人においても4つの遺伝子多型間に連鎖不均衡が存在する可能性が示唆された。
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