【目的】本研究は、早産と関連する疾患を有する妊婦から採取した子宮内組織でのPorphyromonas gingivalis (Pg)の検出と、卵膜組織から分離培養したヒト絨毛膜由来細胞へのPg lypopolisaccharide (LPS)の影響の検討を目的とした。 【材料および方法】1. 子宮内組織でのPg検出に関する研究の同意を得た被験者は現在までに29名だった。すべての妊婦に、妊娠周期に歯周組織検査と、唾液と歯肉縁下プラークの採取を実施し、出産時に子宮内組織を採取した。唾液、歯肉縁下プラーク、および子宮内組織からのPgの検出は、PCR法を用いて行った。2. ヒト絨毛膜由来細胞へのPgLPSの影響に関する研究に同意を得た正常出産妊から、出産時に卵膜を採取し、ヒト絨毛膜由来細胞を分離培養した。絨毛膜由来細胞であることを確認するために、CK7抗体で免疫蛍光染色を行った。 【結果および考察】1. 本研究に参加した29名のうち16名は切迫早産、8名は多胎妊娠、5名は前置胎盤であった。2名の切迫早産妊婦、2名の多胎妊娠妊婦、および2名の前置胎盤妊婦の子宮内組織からPgが検出された。子宮内組織でPgが検出された妊婦のうち、3名の妊婦の口腔内からPgが検出された。子宮内組織のPg検出と、歯周組織の状態との間には有意な関連性は認められなかった。2. 卵膜組織から、ヒト絨毛膜由来細胞を分離培養し得た細胞の80~90%は、CK7抗体染色で陽性であった。現在までの結果から、子宮内組織に到達したPgが子宮内組織において何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。現在までに絨毛膜由来細胞の分離培養が確立できたため、今後はPg LPSがヒト絨毛膜由来細胞において、早産に関連する炎症性物質に与える影響を中心に検討する予定である。
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